コアコミックス発行の漫画『夜分に吸血失礼します。』。吸血鬼になった中年サラリーマンの葛藤と、サイコな後輩との危うい駆け引きを、ネタバレありでご紹介します。
前話で小夜さんは、会社の後輩にさっそく正体がバレてしまいました。彼を罠にひっかけた、この後輩くんの真意とは一体何か?「夜分に吸血失礼します。」2話のあらすじ、感想、見どころのご紹介です!
【夜分に吸血失礼します。】2話あらすじ
会社員ながら、正体は吸血鬼の主人公「小夜さん」。今度は、正体を知られてしまった会社の後輩「山寺くん」の本性を思い知ることになります。
前話から2日ほど経った日。場所は、焼き肉屋。小夜さんは、山寺くんと二人きりで個室です。吸血の件もあって、ややアブナイ展開か……と思いきや、山寺くんの口から暴言。「最悪」「許さねえ」等々。
どうやら山寺くん、かなり裏表のある人物のようです。
サイコな山寺くんの狙いとは
山寺くんの、普段とはまったく真逆の本性。どうやら彼は、「吸血鬼になりたい」という目的のもと、小夜さんを故意に付け回していたようです。
さらには、山寺くんは「小夜さんが吸血鬼になった経緯」もつかんでいます。というのも、小夜さんがほかの吸血鬼に襲われた場に、居合わせていたよう。山寺くんの狙いは、小夜さんを吸血鬼にした、その吸血鬼。自分が吸血鬼になるために、小夜さんを利用しようという魂胆な訳ですね。
ここでは、山寺くんのサイコぶりが際立っています。なぜなら、小夜さん自身、吸血鬼になった経緯について「一度死んで、気がついたら吸血鬼になっていた」と述べています。つまり、山寺くんは、知人が何者かに殺される場面を、平然とながめていたということです。
目的のためなら、手段を選ばない。そんな山寺くんの人柄が、強烈に表れています。小夜さんの経緯も、物語で重要なところですが……。それよりも、山寺くんのヤバさに、くぎ付けになってしまいます。
小夜さんが迫られた選択とは
こうして小夜さんは、後輩の冷酷な本性を思い知りました。人の心がないような山寺くんの様子に、ようやく小夜さんは、彼から逃げる決意をします。
席を立つ小夜さんに、山寺くんは、また彼の痛いところを突くんですね。つまり、食事はどうするのかということ。
山寺くんの血を吸った日から2日。そのあいだ血を吸ってなかっただけで、小夜さんはどうやら限界です。なにせ、こうして食事の話をもちかけられただけで、あさましくも大量のヨダレを垂らしてしまう。そんな小夜さんに、山寺くんは取引をもちかけます。いわく……
山寺くんから血をもらう代わりに、彼の言いなりになること。
こうした血を媒介とした取引関係、というのは吸血鬼漫画でよくある展開だな、と思う方も多いかと思います。ところが、この漫画でありきたりでとどまらないのは、取引相手との相性です。いわば、好ましい相手でもなんでもない。いい歳した男であるうえに、性格はこの通りサイコパス。小夜さんにしてみれば、全く一緒にいたくない相手なんですね。
ただの取引関係でなく、反発し合う相手。このスリルが、2人の関係のスパイスになっています。
血の取引をもちかけられて、小夜さんは?
願ってやまない、血を都合してくれる人間。しかし、その相手は他でもない山寺くん。小夜さんは必死で抵抗しますが、飢えに抗えず彼の血を飲んでしまいます。
取引をもちかけるとともに、山寺くんがさし出したのは、脚。いわゆる、完全に下僕扱いなわけです。
足をなめろ、と。そんな山寺くんの態度に、小夜さんは憤怒の表情。「噛み殺す!」……などと思いつつも、結局、脚にかぶりついてしまいます。
ここで注目なのは、小夜さんが嚙みついた位置。なぜなら、小夜さんのささやかな抵抗がうかがえるからです。
クライマックスの吸血シーン。小夜さんは、靴を履く部分の“足”ではなく、“脚”のすねの部分に噛みついています。これはつまり、“足”をなめてはいないということ。「まだ完全に服従したわけじゃない」という、彼なりの意思表示ととらえられるでしょう。
どうやら小夜さんが完全に下僕となるのは、まだまだ先のようです。
【夜分に吸血失礼します。】2話の見どころ
最悪な相手と逃れられない関係になってしまう、「夜分に吸血失礼します。」2話。見どころはもちろん、一筋縄ではいかない2人の取引関係にあります。
まず、取引をもちかけた山寺くん。吸血鬼の手掛かりになるなら、手段を選ばない。自分の身が危険にもかかわらず、小夜さんに血を提供します。ものすごい執着と言えるでしょう。
そして一方の、小夜さん。真っ当な人間であることを、諦めたくない。したがって、他の人間の血を吸わないためにも、山寺くんが絶対に必要です。
吸血鬼になりたい男と、吸血鬼になりたくない男。全く逆の2人が、逃れたくても逃れられない関係に陥っている。こうした泥沼の関係性に、グッとくる方も多いのではないでしょうか。
【夜分に吸血失礼します。】気になる続きは?
狙い通り、小夜さんを言いなりにすることに成功した、山寺くん。次話では、山寺くんを主人公に、彼の人となりが描かれます。
2話で山寺くんは、吸血鬼になりたい理由を「好奇心」などと言っています。その言動は、はたから見れば、支離滅裂。このように、理解できない人を目の当たりにしたとき、私たちはこう思うんじゃないでしょうか。「いったい何がしたいの?」と。
山寺くんは一体何を求めているのか?それが明らかになるのは、次話になります。
今回、「夜分に吸血失礼します。」2話でご紹介した、2人のこじれた関係性にビビッときた方は、発売中の単行本1巻をオススメします!